概要

ジオアンカー研究会について

ジオアンカー研究会 会長 中野 裕司

 アジアモンスーン気候の東端にあたり高温多湿という気象条件と、山地丘陵によって占められる国土、乾湿・寒暖により四季折々に変化する豊かな森林のなかで我が国の文化・景観ははぐくまれてきた。

 そのような自然の中で生活の場を確保するということは、山地丘陵部の森林を切り開き、平坦地を造成することとなる。このような営為が棚田を造り、里地・里山としての景観へと収束した。やがて治山・治水の結果が実を結ぶにつれ、沖積低地へと生活の場を広げ広大な田圃を造った。また、道路交通網の整備につれ商業が発達し都市が成立し、製造業、サービス業などに従事する都市生活者(市民)が増加し現在に至る。道路交通網の整備は地形的な制約を強く受け、山地丘陵部を切り開き大規模の切土盛土を発生させた。都市部も同様で、工場などの敷地造成・宅地造成は数多くの切土、盛土法面を造成した。

 多雨・急峻という我が国の立地環境(地勢)はもとから自然災害を発生しやすい素因を持つものであるが、これに加え、台風の多襲、地震の多発地帯であるたるめ災害の被害をより大きなものとしている。地球温暖化を起因とするものと考えられるゲリラ降雨と大型台風の襲来、阪神大震災以降、中越地震、能登地震、中越沖地震、岩手宮城内陸地震と連続して発生する地震、これらにより大規模な地滑り・斜面災害が多発している。

 これらの災害で際だったのは、盛土法面の崩壊と急勾配自然斜面の表層崩壊である。また、台風、ゲリラ豪雨によっても盛土法面、自然斜面の崩壊が多発した。これまで安定と考えられてきた盛土法面、樹林の成立する自然斜面、すなわち時間の経過とともに表層のゆるみが発生した盛土法面、風化か進み軟質化した自然斜面も、必ずしも安全では無いと言うことが判明した。

 ジオアンカー研究会は、このような事実に鑑み盛土法面や既存樹林地の緩み土層を簡便な方法で安定させることを研究課題として発会し、ジオアンカーを考案した。

 ジオアンカーは、これまで多用されてきたモルタルを注入固化させたアンカー体を形成させるグランドアンカーや鉄筋挿入工という手法ではなく、機械式のアンカーを採用しアンカー体を土中で鶴の翼状に拡翼させるという方法を採用した。これにより、簡便で安価な施工と打設直後から確実な効果を発揮させることを可能とした。大規模盛土法面の場合は、エアハンマーなどを用いて施工する。しかし、人力施工も可能であるため、自分の家は自分で守る、必要に応じて増し打ちを行うというスタンスでの施工も可能であり、多様な使い方が期待できる。また、トルクレンチを用いアンカー体に作用する力の計測が簡単にできるため、地山の動態観測を行いつつ、必要に応じ適切な対策を実施する情報化施工を可能とすることも特徴の一つといえる。

 経済成長に伴うインフラ整備の時代より、建築構造物をメンテナンスにより持続可能性を高める維持管理の時代へと突入した。盛土・自然斜面の景観性の保全を図りつつ簡便に補強可能なジオアンカーはこのような時代の要求に即応したものと考える。ジオアンカーの活用をお願いしたい。

ページの上に戻る